Try Toとtry Ingの違いとは?ネイティブの感覚と使い分けを徹底解説
英語学習を進める中で、多くの人が一度は立ち止まるのが「try to do」と「try doing」の使い分けです。単語帳や辞書を引くと、どちらも「〜してみる」「〜しようとする」といった似た日本語訳が当てられているケースが珍しくありません。しかし、英語圏の日常会話やグローバルビジネスの最前線において、この2つは話し手の意図や熱量をまったく異なる形で伝える決定的な表現です。
一見すると「後ろに不定詞を置くか、動名詞を置くか」という文法上の形式的な違いにすぎないように思えます。しかし、その背景には英語本来の「心の動き」が色濃く反映されています。本稿では、英米の主要言語教育機関のデータや取材に基づく実例を交えながら、ネイティブスピーカーがどのような世界観でこれらを使い分けているのかを多角的に解き明かしていきます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「try to」は困難を乗り越えようとする「努力・奮闘」を指し、「try ing」は解決策や効果を確かめる「実験・お試し」を指すという根本的な差がある。
- 要点2:不定詞(to do)が持つ「未来への矢印・心理的抵抗」と、動名詞(doing)が持つ「すでに目の前にある現実・行為の生々しさ」を掴めば丸暗記は不要。
- 要点3:TOEIC英文法頻出問題の定番であるremember、forget、stopなどの「不定詞動名詞で意味が変わる動詞」群も、共通の認知フレームで明快に整理できる。
【決定的な違い】なぜ意味が激変するのか?「努力」と「お試し」の境界線
「try to」と「try ing」の使い分けに迷っていませんか?実は意味が大きく異なる決定的な理由とは何でしょうか。学校の授業ではどちらも「試みる」と教わることが多いものの、ネイティブの英語使い分けにおいて、両者の心理的負荷と視点の向け先は対極に位置しています。
英国の公教育機関であるBBC Learning Englishの解説や、海外のESL(英語を第二言語とする学習者向け)フォーラムに集まる言語学者の知見を統合すると、その本質は「行為そのものが難しいのか、それとも行為自体は簡単で結果がどうなるかを見たいのか」という点に集約されます。
try toの意味と例文|壁を乗り越えようと「努力・奮闘する」
try to doは、「困難であることが分かっている目標に対し、全力で努力して挑む(attempt to do something difficult)」という状況で用いられます。行為を達成すること自体に大きなハードルが存在するため、「なんとか〜しようと必死になる」というニュアンスが色濃く出ます。
代表的な例文を見てみましょう。
例文1:I'm trying to learn Japanese, but it's very difficult.
(私は日本語を習得しようと必死に努力していますが、本当に難しいです。)
例文2:He tried to push the broken car by himself, but it didn't move an inch.
(彼は故障した車を一人で押そうと力を尽くしたが、1インチも動かなかった。)
英語圏の言語学者による解説でも指摘されている通り、「Try to give up candy」と表現した場合、そこには「甘い物の誘惑に負けそうになりながらも、必死に食べるのを我慢しようと格闘している」という心理的葛藤が描かれます。つまり、達成の可否が不確実な行為そのものへのチャレンジが「try to」の核心です。
try ingの意味と例文|気軽なアイデアとして「試しにやってみる」
一方のtry doingは、「行為そのものは簡単に実行できるが、それが期待通りの効果を生むかどうかを確かめるためにテストしてみる(do something as an experiment)」という感覚です。行為自体の実行にはほとんど努力や苦痛を伴いません。焦点は「やってみた結果、どうなるか」にあります。
例文1:If you have a headache, try drinking a glass of warm water.
(頭痛がするなら、試しに温かい水を一杯飲んでみたらどうですか?)
例文2:The printer wasn't responding, so I tried restarting it.
(プリンターが応答しなかったので、試しに再起動してみました。)
水を飲むことや、パソコンを再起動すること自体に並々ならぬ努力は不要です。しかし、それによって「頭痛が治るか」「印刷ができるようになるか」という結果は未知数です。前述のキャンディの例で言えば、「Try giving up candy」と言った場合、「試しに甘いものを断ってみなよ。そうすれば体重が落ちるかもしれないし、落ちないかもしれないけれど」という、解決手段の提案になります。

認知言語学で解き明かす|不定詞と動名詞のニュアンスの違い
なぜ同じ「try」という動詞の後ろに置かれるだけで、これほど意味の落差が生まれるのでしょうか。その理由は、文法規則の丸暗記ではなく、英語の深層にある「不定詞(to do)」と「動名詞(doing)」が本来宿しているコアのイメージにあります。
認知言語学の第一人者らの研究によると、前置詞「to」から派生した不定詞は、「未来へ向かう矢印(→)」と「到達点」を強く意識させる性質を持っています。まだ到達していない場所や未来の行動へ向かってエネルギーを注ぎ込むため、そこには必然的に「時間的な隔たり」や「乗り越えるべき抵抗(ハードル)」の感覚が生まれます。「try」と結びつくことで、「まだ達成できていない未完了の壁に向かって、ぐっと力を込めて手を伸ばす」という動的な努力のニュアンスが立ち上がる仕組みです。
対照的に、動名詞の「-ing」は、「生き生きとした現実の情景」や「すでに行われている動作そのもの」を目の前に呼び出す性質を持ちます。時間的な距離はなく、その行為に直接触れている状態です。「try」と合体すると、「その行為をポンと実際に手元でやってみて、どんな反応が起きるか観察する」という実験的なアプローチに転化します。
日常の会話で一瞬の迷いも生じさせないための「try to try ing覚え方」として、以下のメンタルモデルを持っておくと直感的に整理できます。
- try to do:目標の前に「高い壁」があり、それをよじ登ろうと汗をかいている姿
- try doing:目の前に「実験器具」があり、スイッチを軽く押して反応を見ている姿
【徹底比較】不定詞と動名詞で意味が変わる最重要動詞一覧データ
英語の世界には、tryと同様に後ろにto不定詞を取るか動名詞を取るかで、意味が劇的に分岐する動詞が存在します。これらはTOEIC英文法頻出問題における定番中の定番であり、同時に国際的な実務コミュニケーションで重大な誤解を招きやすい危険地帯でもあります。
大手語学スクールの指導実績データや過去のテスト出題傾向を分析し、特に混同されやすい主要動詞の差異を以下の構造化テーブルに整理しました。
| 動詞と構文 | 意味とニュアンス | 代表的例文 | 編集部の見解・頻出トラップ |
|---|---|---|---|
| try to do | (困難なことを)努力してやろうとする | I tried to fix the leak myself. (水漏れを自力で直そうと苦闘した) | ビジネスでコミットメントを示す基本形。「努力したが失敗した」を含意することも。 |
| try doing | (効果を見るため)試しにやってみる | Try adding some salt. (試しに少し塩を入れてみては) | 提案・アドバイスの定番。上司への報告で使うと「軽い思いつき」と誤解される恐れあり。 |
| remember to do | (未来のタスクを)忘れずにやる | Remember to lock the door. (忘れずに鍵をかけてね) | リマインダーや業務指示の必須表現。「これから行う動作」を指す。 |
| remember doing | (過去に)やったことを覚えている | I remember meeting him before. (以前彼に会ったのを覚えている) | 過去の体験の記憶。-ingの「現実の情景」が脳内に蘇っている状態。 |
| forget to do | やるべきことを忘れる(未実行) | I forgot to send the report. (報告書を提出するのを忘れた) | 行為が行われなかった過失を表す。ビジネスでのトラブル報告で頻出。 |
| forget doing | 過去にやったことを忘れる(実行済) | I'll never forget seeing that view. (あの景色を見たことは忘れない) | 通例否定文(never forget等)で多用。「〜した過去の記憶」を失うこと。 |
| stop to do | 〜するために立ち止まる(副詞用法) | He stopped to check the map. (地図を見るために足を止めた) | 文法上、stopの目的語ではなく「目的を表す不定詞」。歩行や作業を中断して次へ向かう。 |
| stop doing | 〜していた行為をやめる(目的語) | She stopped smoking last year. (彼女は昨年タバコをやめた) | 現在進行していた動作や習慣をストップすること。stopの正真正銘の目的語。 |
このように並べて比較すると、すべての動詞において「to=これから向かう未来の行動」「-ing=現実に起こった・起こっている行動」という一貫した法則が貫かれていることが理解できます。

【実態検証】TOEIC英文法頻出問題とビジネス現場で起きる「誤用トラブル」
資格試験対策や実務の現場を調査すると、この「try to doとtry doingの使い分け」を感覚だけで処理している学習者がいかに多いかが浮き彫りになります。大手オンライン英会話プラットフォームや語学系コミュニティにおける学習者の相談データを見ると、文法問題での失点や、業務上のチャットツールでの意図しないニュアンス伝達が後を絶ちません。
ビジネスメールで上司を激怒させた「try doing」の罠
外資系ITコンサルティング企業に勤務する日本人アソシエイトの体験談として、非常に示唆に富む実例があります。緊急のシステム障害が発生した際、クライアント対応に追われる米国人上司から「今日の夕方までにこのバグを修正できるか?」と問われた際、彼は善意から次のように返信しました。
「I understand the urgency. I will try doing it by 5 PM.」
本人は「午後5時までに終わらせるようやってみます」という謙虚な努力のつもりで書いたメッセージでした。しかし、これを受け取った上司は眉をひそめ、「深刻な危機に対して、君は『お試し感覚』で適当に触ってみるつもりなのか?責任を持って解決する気があるのか?」と強い不信感を露わにしました。
上司が求めていたのは、障害という困難に対して全力で取り組む「I will try to fix it」、あるいはより断定的なコミットメントでした。「try doing」を使ってしまったことで、「試しに5時までに終わらせるというアイデアを実験してみます」という、当事者意識の希薄なトーンとして伝わってしまったのです。
TOEIC Part 5における引っかけの構造
TOEIC Part 5(短文穴埋め問題)においても、remember toとremember ingの違い、あるいはforget toとforget ingの違いは、スコア600点〜700点台の受験生をふるい落とす定番の罠として機能しています。
問題文中に「tomorrow」や「next week」といった未来を示す副詞、あるいは「Please」から始まる依頼文がある場合、そこで求められているのは未来のタスクである「remember to do」です。一方で、文脈が「10年前の出来事」や「過去の記憶」にフォーカスしている場合は「remember doing」を選ばせる設計になっています。文脈の時系列を把握せず、単語の表面だけを見て直感で選ぶと、確実にスコアを落とす仕掛けです。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|「try to=失敗した」という都市伝説
インターネット上の英語学習ブログや掲示板では、時に極端な文法解説が拡散されることがあります。その最たる例が、「tried to do(過去形)は、必ず失敗したことを意味する」という言説です。
「I tried to call you.」は「電話しようとした(けれど、繋がらなかった/できなかった)」という意味になり、行為が失敗に終わったことの婉曲表現だと解説されるケースが多々あります。これ自体は日常会話の語用論(プラグラマティクス)として半分真実ですが、言語学的な事実としては完全な誤解を含んでいます。
オックスフォード現代英英辞典やコーパス(大規模言語データベース)の実例を綿密に検証すると、tried toの後にその試行が成功した文脈が続く用例は無数に存在します。
例文:I tried to persuade him for two hours, and finally he agreed.
(彼を2時間かけて説得しようと粘り、最終的に同意を取り付けた。)
なぜ「失敗した」というニュアンスが生まれやすいのかというと、ネイティブスピーカーは「何かを簡単にやり遂げた時」には、わざわざtryを使わず「I called you.」や「I solved it.」と直接動詞を使うからです。あえて「努力して挑んだ(tried to)」と述べることで、「そこには強い抵抗があり、普通には進まなかった」という情報が強調され、結果として「ダメだったのでは?」という推論が聞き手に働きやすくなるに過ぎません。
「tried to=100%失敗」と短絡的に覚えるのではなく、「困難と奮闘したプロセスに焦点を当てている表現」と正しく捉えることが、高度なリスニングや読解における読解力を支える土台となります。

【プロの結論】英語脳を定着させる実践アプローチと学習の判断基準
不定詞と動名詞の使い分けを本当の意味で体得し、瞬時に使いこなす「英語脳」を作るためには、学習者の現在の英語レベルや思考スタイルに応じた適切なアプローチを選択することが不可欠です。
文法規則をロジックで捉えたい学習者向けの処方箋
論理的な納得感を重視する学習者には、「時間の矢印(タイムライン)」を描くノート術が最適です。ノートの左側に過去、中央に現在、右側に未来を配置し、stopやforget、rememberといった動詞を中央に置きます。その上で、
- 右側の未来へ向かう矢印には「to do」(これから行う義務・努力)
- 左側の過去や手元の情景を囲む円には「doing」(すでに行った事実・進行中の行為)
という図解を自らの手で書き出すトレーニングです。この視覚的なマッピングを行うだけで、頭の中で「日本語訳を介した変換作業」を行う悪癖が解消されます。
感覚・発話スピードを重視したい学習者向けの処方箋
一方で、実際の英会話でテンポよく話したい学習者には、定型フレーズによるシチュエーション音読が圧倒的な効果を発揮します。単語単体ではなく、ネイティブが日常的に用いる典型的な感情とセットで口に馴染ませる方法です。
- I'm trying to concentrate!(今、集中しようと必死なんだから邪魔しないで!)
- Why don't you try asking her?(試しに彼女に聞いてみたらいいんじゃない?)
これらのフレーズを、感情を込めて各20回以上シャドーイングすることで、脳の運動前野に「努力=try to」「お試し=try ing」の神経回路がダイレクトに刻み込まれます。
【try to try ing】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日常会話の提案で「Why don't you try to〜?」と言うのは不自然ですか?
A1:文法的に間違いではありませんが、ニュアンスに注意が必要です。「Why don't you try to call him?」と言うと、「彼に電話するのは精神的に大変だろうけれど、努力して電話してみたら?」という重い響きになります。単に「試しに電話してみたら?」と軽く助言したい場合は、「Why don't you try calling him?」と動名詞を使うのが自然です。
Q2:stop to doとstop doingの違いをもっと簡単に覚える方法はありますか?
A2:stopの後ろに「タバコ」を当てはめてみるのが最も確実です。「He stopped smoking.」は禁煙(吸っていた行為をやめた)ですが、「He stopped to smoke.」は歩くのを止めて一服した(タバコを吸うために立ち止まった)という意味になります。「to」は目的(〜するために)を表す矢印だと意識してください。
Q3:TOEIC対策として、不定詞しか取らない動詞、動名詞しか取らない動詞も一緒に覚えるべきですか?
A3:優先順位をつけて整理することをおすすめします。wantやdecideのように「to不定詞のみを取る動詞(未来志向)」、enjoyやfinishのように「動名詞のみを取る動詞(現実・反復)」をまず固めた上で、今回解説した「両方取れるが意味が劇的に変わる動詞(try, remember, forget, stop, regret)」を識別できるようにするのが、最短でPart 5を満点に近づける戦略です。
まとめ:今後の英語学習と失敗しないための判断基準
文法用語としての「不定詞」と「動名詞」は、無機質なルールの羅列に見えるかもしれません。しかしその実態は、話し手が物事に対してどれほどの情熱を傾け、どのような距離感で見つめているのかを鮮やかに表現するための、極めて精緻なツールです。
困難に立ち向かい、汗を流して努力する姿勢を伝えたい時は、力強く未来へ手を伸ばす「try to do」を選択してください。一方で、柔軟な発想で新しい可能性を探り、まずは実験的に一歩を踏み出す場面では、軽やかな足取りを思わせる「try doing」が力を発揮します。
言葉の持つ本来の息づかいを掴むことこそが、単なる試験対策を超えて、相手の心に響く本物の英語力を獲得するための最も確かな道筋です。 (出典: try to try ing(Yahoo!ニュース))